労災申請は会社がやることが多いと思います。
一部ネット上に労災申請は本人がやると書かれていることもありますけど、労働保険番号がわからなかったり、事業主証明が必要だったりするので、会社で手続きをするのが普通です。
大きな会社だと人事労務を担当する部署に労災申請についての経験が豊富な人がいるはずです。
私の会社で最も詳しいのは、私です。
労災と言っても、東京の会社は9割が第三次産業で、特に都心部の会社には製造業などほとんどないので、工場で機械に挟まれるような昭和時代の業務災害もなくなりました。田舎ではまだあるのかもしれませんが、都会と田舎では常識が全く違います。
通勤災害にしても、全員が電車通勤なので、車社会の地方のように自動車で通勤して交通事故を起こして怪我をしたというのもありません。
多摩地区や神奈川埼玉千葉の奥地からはるばる通勤していて、自宅も駅から遠いような人が、最寄り駅まで自転車に乗って転倒して怪我をして、これは労災ですか?と訊いてくるようなことはあります。
(ちなみにうちの会社で自転車通勤やバイク通勤は認めていませんが、ルールを守らずに自転車やバイクに乗って怪我をする人がいるのです)
そんな時は、私が「それは労災だね」「居酒屋に寄った?それは労災にはならないね。というかそれ飲酒運転だろ! (自転車の飲酒運転も罰則の対象)」など、ケースごとに判断して、これは労災だと判断すれば申請のやり方を教えてあげます。実際に労災認定をするのは労働基準監督署ですけど、人事労務のベテランなら、これは労災とは違う、ということくらい事前にわかるものです。
たまに会社が「労災の療養補償給付や休業補償給付を支払うのが嫌だから労災申請を嫌がる」などと的外れなことを言う人がいますけど。労災の給付は労災保険から出るものなので、会社が払うわけではありません。
会社が払っているのは労災保険料です。
この労災保険の労災保険率は、労災ゼロなら増減率が最大40%減になります。(これをメリット制と言います)
だから労災保険料のメリット収支率を少なくするために事業主証明を会社が拒否すると主張するなら、まだ言っていることが分かりますが、会社が労災補償を嫌がるというのは嘘です。そのための保険なのですから。
それよりも労災申請を会社が拒否する理由は、
不支給になるのがわかりきっているのに
労災申請をしたがる世間知らずの社員に、労災でないのに申請するのは社員にとってデメリットがあることを教えてあげるためです。
デスクワークの場合、業務災害による休業がめったにないのは上に書いた通りです。だけど私傷病による休職ならたくさんあります。
私傷病休職の原因で最も多いのが、メンタル不調です。(抑うつ状態や、適応障害や、社交不安障害など)
それらのメンタル不調は業務外の病気で、労災とは違うので、労災保険から補償が給付されることはまずありません。
※例外的に3か月連続で100時間以上残業をしていたなど明らかに仕事の負荷のせいだと断定できるなら労災認定される可能性はあります。ただし今は月100時間以上の残業が違法になっているので、合法的な会社で月100時間以上の残業はあり得ません。そんなのはごく一部の違法企業の話です。
私傷病での休業補償給付は無理だと分かっていながら労災申請をしても、不支給になることが決定されるまで、何か月もかかることがあります。
ノーワークノーペイの原則により、働いていない人に給与は払えないので、不支給の決定まで無給が普通です。
これが労災保険でなく「健康保険」なら、無給になってもすぐに傷病手当金が給付されます。
標準報酬月額の約3分の2が支給されます。(手取り額で計算すると大抵の人は8割前後になります)
自己負担分の社会保険料を会社宛に振り込んでもらうこともありますが、給付額は手取りの約3分の2ではなく「標準報酬月額」の約3分の2です。
健康保険だと何の問題もなく傷病手当金が給付されるのですから、その方が従業員にとってもよっぽどいいでしょう。
労災にこだわる人は、収入が途絶えるデメリットがあることを理解していないのだと思います。
労災認定されるまでは傷病手当金を受給しろと書かれている業者の宣伝サイトが一部にありますけど、傷病手当金は業務外の怪我や病気で支給されるものです。
労災保険と健康保険は縄張りが違います。労災保険法は旧労働省の縄張りで、健康保険法は旧厚生省の縄張りです。今は厚生省も労働省も一緒になったのだから法律も一緒だろうと思ったら大間違いです。
業務上の病気だから労災だと言っておきながら、業務上の病気ではないから健康保険から傷病手当金を受給するだなんて矛盾だらけ。
詐欺師が不正受給をする手口だと思われても仕方ないですよ……。
※会社が事業主証明に虚偽の記載をすると、不正受給者と連帯責任になります。
(労働者災害補償保険法第12条の3) 
今はストレスチェックも労働安全衛生法によって義務化されていますし、パワハラ防止も労働施策総合推進法で義務化されています。
まともな会社ならメンタルヘルス問題の対策はちゃんとしているので、仕事によるストレスやメンタル不調で労災が認定されることも、まともな会社ではないのです。
もしまともでない会社で働いているなら、そんな会社にいつまでもしがみつかないで、さっさと転職するのが吉です。今は転職など当たり前のことですから。
これも転職先の選択肢がたくさんある都会と、選択肢のない田舎とでは常識が全く違うのかもしれませんけどね。
いずれにしても、会社の人事労務の担当者がベテランなら、その病気が労災に該当するかどうかは今までの経験でちゃんと分かっています。
労災申請を会社が拒否する理由は、従業員が無収入になった挙句に不支給になるというデメリットがあるから。
会社が労災補償をしたくないからというのは誤解です。
不支給になるような病気は健康保険の対象なので、労災保険の給付請求の申請をするだけ無駄なのです。申請しないほうが良いから、そう言っている、ということを理解して欲しいですね……。
【まとめ】
・今は怪我よりメンタル不調で会社を休む人の方が多い。
・メンタル不調は健康保険の傷病手当金の範囲。
・労災保険から休業補償を受けるのはよっぽどの例外ケースだけ。
・労災でないのに労災申請をしても不支給決定まで無収入になるので従業員にはデメリットしかない。
・傷病手当金との二重申請は、矛盾があるので出来ないのが普通。
・労災でないのに労災保険から受給しようとするのは不正受給の恐れがある。